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Story
野迫川村の大自然とそこに暮らす野鳥たち
エッセイ
- Date
- Writer
- 藤谷琢磨(野迫川村地域おこし協力隊)

野迫川村のお気に入りの場所、「高野辻休憩所」。そこから見える自然が語りかけるのは、「ただ存在しているだけで素晴らしい」ということ。
そう感じさせてくれる大自然、景色。昔からあった幾重にも重なる山々。
遠く奥には、霊峰として有名な大峰山系が見える。地球の雄大さとゆったりとした時間の流れを感じる。
朝は、映画のワンシーンのような雲海が見られ、その景色は、さながら龍が住む山。願い事を叶えてくれる龍が出てきそう。
日が昇ってくると山々の間から鳥たちの声が聞こえる。
キョロロロロ! キョロロロロ!
火の鳥「アカショウビン」。その名の通り、全身真っ赤な鳥だ。山深いところで鳴いているので、その姿を見るのは難しいけれど、清涼感のある声に癒される。
ホーホケキョ!
野迫川村の村鳥 ウグイスの鳴き声もする。
夜になると、人工の光が全くないその世界は、星と月が輝く。
月ってこんなに明るいんだ。
都会では感じることのできない月の明るさ。これなら昔の人が月の光で本を読んでいたのも納得できる。
幸せ。
静寂の中、何かそこに特別なものがあるわけではないけれど、感情が込み上げてくる。大自然に囲まれて、自分も自然に溶け込んで、自分と自然の境界線がなくなる。
何者でもないありのままの自分でいいよ、そのままで。
自然が語りかけている。何か特別なことをするから偉いのではなく、ただ存在していることが素晴らしい。そう感じさせてくれる。
自分の人生の中で半世紀が経ち、地域おこし協力隊として2025年7月末に野迫川村に移住してきた。若い頃は欲にまみれ、多くを掴み取れば幸せになれると思っていた。
世間に認知されている会社に勤める。社会的な地位を上げる。高級車に乗る。立派な家に住む。年収を上げる。そういう目標に向かって無我夢中で努力した。そしていくつかは掴み取った。その瞬間は達成感に包まれて、恍惚感を得る。でも次の瞬間、もっと上へもっと上へ、際限なく欲が出てくる。
全然幸せにならない。苦しい。
心も身体も疲弊し、何もかもなくなった自分に、自然の中の山々が語りかけてくれる。「幸せは掴み取るものじゃないよ」って。
幸せはただ感じるもの。自分の中に、日々の暮らしの中に。
欲はまったくなくなった訳ではないけれど、今は以前に比べて気持ちがずいぶん楽になった。そして野鳥好きの私にとっては、最高に幸せな環境、日々の中で暮らしている。
特に5月から7月にかけては、夜が明けると鳥たちが一斉に鳴き出し、鳥たちのコーラスに包まれて目を覚ます。アカショウビンやカッコウ。まるで筒や鼓を叩くように「ポポッ!ポポッ!」と鳴くツツドリ。「山椒の実を食べて辛いよ〜」って言っているみたいに、サンショウクイが「ヒリリ!ヒリリ!」と鳴く声も聞こえる。
布団から起きて仕事場へ向かう。午前中は山で高野槙を切る仕事をしている。山の中にいるとたくさんの鳥に出会う。一番よく出会うのはカケス。ふわふわと飛び、腰が白いのがよく目立つ。
鳴き声は、「ギャーギャー!」と、カラスの仲間なのであまりいい声ではない。ただ春に、甘えるような囁き声で鳴いているのを初めて聞いてびっくりした。
春先には、ヒガラが巣材集めで、すぐ近くに寄ってくる。
梯子に巻いていた紐を取りに来たり、仕事道具が入ったリュックを置いていると、その周りをウロウロと巣材探しをする。シジュウカラの仲間で、白と黒の鳥。頭が少し逆立っているのが特徴だ。
それから年中通して、よく鳴き声が聞こえるのがソウシチョウ。「相思相愛」が由来で、漢字では「相思鳥」と書く。名前の通り、片方が鳴くともう片方がそれに応えるように鳴き、とっても仲がよいんだなぁって感じる。もともと日本には棲息していなかった鳥だけど、中国大陸からペットとして輸入され、鑑賞目的で放鳥されて増えてきたらしい。こんな山奥まで棲息域が広まって、生きるたくましさを感じる。
仕事から帰ってくると、自宅の上空ではツバメやイワツバメ、コシアカツバメなどが出迎えてくれる。たまにタカの仲間のハチクマやノスリも飛んでいる。
夕方になるとシジュウカラやメジロ、ヤマガラ、エナガ、ヒガラ、コガラなどがやってくる。秋には真っ赤に紅葉したモミジにやってきたエナガが、とっても可愛かった。
夜になると「キョキョキョキョキョキョ!」とヨタカの声が聞こえたり、「ヒョーヒョー!」とトラツグミの不気味な鳴き声がしたりする。トラツグミはあまりに不気味な鳴き声なので、昔の人は妖怪「ヌエ」が鳴いていると信じていたらしい。
休日は、よく近所を歩いて野鳥探しをする。野迫川村は標高が平均700メートルぐらいと高いので、ゴジュウカラやキバシリもよく見られる。ゴジュウカラは、頭を下にして器用に木の幹を移動する姿が微笑ましい。
キバシリは、まるで忍者のように木と同化する。自然の保護色に驚かされる。
野鳥を探しているとシカにもよく出会う。野迫川村で見るシカは、大自然の中で棲息しているからか凛としてたくましく見える。
たまにカモシカにも出会える。ゆっくりとした動作で歩き、いかにも山の主という感じ。
野迫川村での生活は、飽きることのない自然がいっぱいで、毎日が穏やかで都会にはない豊かさを感じる。
今日も昔からずっと変わらない夕日を見ながら幸せを感じ、一日が終わる。
感謝。
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